「中和」は中学受験で頻出な単元である一方、苦手な生徒の多い範囲でもあります。お子様から「ムラサキキャベツ液が赤色って何性?」や「中和の計算はどうやればよいのか分からない」など質問を受けたことがあるかもしれません。
今回、中和についての重要事項として、中和反応の代表例、覚えるべき指示薬の色の変化、反応比・反応量の捉え方を整理します。特に、反応比は「カレーライス」を例に少ない量に対応して反応することを理解し、問題で「ぴったり」反応する条件を見つける訓練を積めば、着実に対策することができます。
ご紹介するポイント・例題がご家庭での中学受験対策の一助となれば幸いです。
1.「中和」の重要事項は3つ!
中和における重要事項をまず確認すると、
の3つになります。それぞれについて、要点を確認していきましょう。
2.塩酸と水酸化ナトリウム水溶液での中和反応が代表例
酸性の水溶液とアルカリ性の水溶液を混ぜると、2つの水溶液の性質を互いに打ち消し合ってしまい、この反応を中和反応と言います。
中和反応の代表例は、「塩酸と水酸化ナトリウム水溶液」の反応です。
小6で中和が苦手な場合、小4・5で中和を学習しはじめた場合などは、まずこの反応からチェックすると良いでしょう。
ポイントは、①塩酸と水酸化ナトリウム水溶液から何ができるか、②それぞれの水溶液の性質は何か、③各反応物はそれ自体が固体・液体・気体のいずれかが分かっているかです。
① 塩酸と水酸化ナトリウム水溶液からできるのは、食塩(塩化ナトリウム)です。
覚え方としては、塩酸に溶けている「塩化水素」、水酸化ナトリウム水溶液に溶けている「水酸化ナトリウム」より、「塩化」と「ナトリウム」をくっつけると「塩化ナトリウム」、「水素」と「水酸化」をくっつけると「水」になるです。これを押さえておくと忘れにくいです。
② 塩酸は「酸性」、水酸化ナトリウム水溶液は「アルカリ性」、そして食塩水はそれらが打ち消し合うので「中性」です。
③ 塩酸にとけている塩化水素は「気体」で、水酸化ナトリウム水溶液の水酸化ナトリウム水溶液は「固体」、食塩も「固体」です。
中和反応はまず塩酸と水酸化ナトリウム水溶液から食塩水ができる例をチェックする!
3.指示薬の色の変化は表・ゴロ合わせでまとめて覚える
水溶液の酸性、中性、アルカリ性は、リトマス試験紙などの「指示薬」の色の変化で調べることができます。
中学受験では、指示薬として「リトマス試験紙」・「BTB溶液」・「フェノールフタレイン溶液」・「ムラサキキャベツ液」の4つを覚えておく必要があります。
特に、「ムラサキキャベツ液」は中学受験特有の指示薬なので、ご家庭で教えるときには「そんなのあったか」と思われるかもしれません。ただ、2020年度の大学附属中学でも出題例がありますので、忘れずにチェックして下さい。
表に水溶液の性質ごとの指示薬の色の変化をまとめます。お子様と色の変化を確認していって下さい。
この中で、ムラサキキャベツ液は色の変化に富んでいるので、なかなか覚えにくいと思います。そんな時は、ゴロ合わせを活用するのがおすすめです。
ゴロ合わせの例としては
「赤ピーマンさんの、村に、緑の木アリ」
などが挙げられます。
4つの指示薬の色の変化を表・ゴロ合わせを活用して覚える!
4.中和反応の量は「カレーライス」を例に考える!
中和反応の「量」を計算するには、2つのことを理解することが必要です。それは、①反応するときの量の比(反応比)、②少ない量だけ反応するの2点です。
この2点について理解するときに役に立つのが「カレーライス」の例です。
いま、カレールー1杯とごはん1ぜんでカレーライス1皿ができるとし、これを基準とします。これを図で示すと、次のようになります。
基準をふまえて、カレールーとごはんの数からカレーライスが何皿できるか考えてみます。
(1)カレールー2杯とごはん2ぜんのとき
カレールーとごはんの数がぴったり合っているので、カレーライスは2皿です。
(2)カレールー1杯とごはん2ぜんのとき
カレールーの方が少ないので、カレールーの分しかカレーライスは作れません。
よって、カレーライスは1皿で、ごはんが1ぜんあまります。
このように、足し合わせる基準(中和では「反応比」です)が分かり、どちらが少ない量なのか判断できれば、結果的に何がどれだけできるのか判断できます。
「カレーライス」の例を使ってもう少し考えてみましょう。
先ほどとは異なり、カレールー2杯とごはん1ぜんでカレーライス1皿ができるとし、新しい基準とします。カレールーが多めのカレーライスが好きな人(著者もその一人)での基準になったときです。同様に図で示すと、次のようになります。
新しい基準をふまえて、カレールーとごはんの数からカレーライスが何皿できるか考えてみます。
(3)カレールー2杯とごはん1ぜんのとき
ポイントは、「基準(反応比)」と「少ない量」をチェックすることです。カレールー2杯とごはん1ぜんでぴったり合っているので、少ない量はカレールーです。よって、カレールー2杯分のカレーライス1皿しか作れず、ごはんが1ぜんあまります。
カレーライスの例にて、カレールーを「塩酸」、ごはんを「水酸化ナトリウム水溶液」に置き換えると、カレーライスは「食塩水」が当てはまります。
従って、中和であっても、①反応比、②少ない量の2つを確認すれば、どれだけ反応するのかが分かるのです。
中和の量は「カレーライス」を例に考えると分かりやすく、反応比と少ない量に注目する。
5.中和反応の問題を解くときにはまず「ぴったり反応」を見つける
中和のポイントが整理できたら、例題演習で実践力を高めましょう。
量の計算で大事なのは、①まず「ぴったり」反応する条件を見つけ反応比を探すこと、②反応比より「少ない量」をチェックすることの2点です。
【問題】
ある濃さの塩酸10mLと水酸化ナトリウム水溶液20mLを混ぜ、BTB溶液を加えると緑色になりした。次の問いに答えなさい。ただし、塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の濃さは変化しないものとします。
(1)塩酸10mLと水酸化ナトリウム水溶液20mLを混ぜたあとの水溶液には何が溶けていますか。
(2)塩酸10mLと水酸化ナトリウム水溶液20mLを混ぜたあとの水溶液に、BTB溶液ではなくムラサキキャベツ液を加えると何色になりますか。
(3)塩酸20mLと水酸化ナトリウム水溶液50mLを混ぜ、ガスバーナーで水をすべて蒸発させると固体が残りました。この固体には含まれている物質をすべて答えなさい。
【解答】
(1)塩酸10mLと水酸化ナトリウム水溶液20mLを混ぜBTB溶液を加えると緑色なので、この水溶液は中性です。
ということは、酸性の塩酸もアルカリ性の水酸化ナトリウム水溶液も残っていないことが分かります。
また、塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の中和からは、中性の食塩水ができます。
よって、答えは食塩水。
(2)(1)より混ぜた後の水溶液は中性の食塩水です。
よって、ムラサキキャベツ液の色はむらさき色です。
(3)塩酸20mLと水酸化ナトリウム水溶液50mLなので、どう中和したかが一見分かりません。
そこで、まずは今回の中和反応で「ぴったり」反応する条件から反応比を探します。
(1)より塩酸10mLと水酸化ナトリウム水溶液20mLで「ぴったり」反応することが分かります。
よって、反応比は、塩酸:水酸化ナトリウム水溶液=10mL:20mLです。
次に、反応比より塩酸と水酸化ナトリウム水溶液のうち「少ない量」をチェックします。
反応比より塩酸20mLとぴったり反応する水酸化ナトリウム水溶液□(mL)は、
塩酸:水酸化ナトリウム水溶液
= 10mL:20mL=20mL:□
□=40mL
よって、加えた水酸化ナトリウム50mLのうち40mLは中和で使われ、もう10mLはあまりであることが分かります。
その為、中和反応後に残っている水溶液は、中和による食塩水と水酸化ナトリウム水溶液です。
従って、加熱により水が蒸発すると残る固体は、食塩と水酸化ナトリウムです。
中和の問題では、まず「ぴったり」反応する条件から反応比を探す、次に「少ない量をチェックする!
6.まとめ
中和が苦手な生徒や学習しはじめて間もない生徒では、中和をどのように捉えるのかがあやふやな場合があります。まずは、基礎知識として、①塩酸と水酸化ナトリウム水溶液の反応、②指示薬の色の変化、③反応比・反応量を整理しましょう。そして、次に、実際の問題で、「ぴったり」反応する条件から反応比を探す、「少ない量」をチェックするの2点を練習していきましょう。根本的な理解と解法の型が身につけることで着実にレベルアップできます。
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研究者だった経験を活かし、小学生に理科および算数、中高校生には物理化学数学を指導しています。専門的な内容も小学生にでも分かるように噛み砕くことを意識し、医学部指導も行っております。分かりやすく情報を伝えていきます。