私は指導している塾の校舎内では生徒、教務社員たちから無類の野球好きとして認知されています。特に千葉県に本拠地を置く千葉ロッテマリーンズの大ファンでもあり、年間30試合程度は観戦をしています。
さて、緊急事態宣言も明け、無観客ではありますが、6月19日から野球が再開いたします。
今回はそれを記念(?)して、野球で算数を考えてみようかと思います。
(少しだけマニアックな世界に入っていきますので、野球嫌いな方は回れ右でお願いします・・・)
野球を観戦しながら、子どもに算数を教えるきっかけになればと思います。
野球に限った話ではありませんが、日常にはたくさん算数を教えるきっかけがあります。参考にしてみてください。
目次
1.野球で教える算数とは?
野球では様々な数字が使われています。それを本塁打数、打率、勝利数、防御率など様々な指標で選手を評価していきます。それを大きく分けると、「数を積み上げていく成績」と「割合で表される成績」の2種類に分けられます。
割合で表される成績として、野球を知っている人なら真っ先に思いつくのは「打率」「防御率」などの言葉でしょう。打率が高いとバッターとして一流になっていき、防御率が低いとピッチャーとして一流になっていきます。では、野球を知らない人からしてみると、「打率は高いから良くて、防御率は低いから良いって、なんかおかしくない?」という感覚を持ってしまうでしょう。
成績以外で思いつくことと言えば、ピッチャーの球速などでしょう。つまり速さの感覚です。最近のピッチャーは時速150kmぐらいの速さで投げてきますが、それがどのぐらいの距離から投げてきて、何秒でバッターの前に到達するのか、気になった事はありませんか?
子どもが気になっている場合もあります。または、こちらから問いかけてみるのもいいでしょう。
また、平均や場合の数などへも色々応用する事ができ、私の授業では度々登場します。
2.プロ野球で子どもに打率と防御率など「割合」を教える
先程の打率と防御率の話に戻してみましょう。まず、それぞれには言葉の定義があり、それが正しく入っていれば疑問はスッキリ解決します。
打率・・・打数に対するヒットを打った数の割合の事
ここで、割合を思い出してください。
割合の3つの要素を振り返ってみると、「もとにする量」「比べる量」「割合」の3つでしたね。
それぞれの簡単な見分け方を書くと
割合 ・・・◯割◯分◯厘、◯%、◯倍など もとにする量・・・割合の前に書いてある「〜の」「〜に対する」「〜をもとにした時の」 比べる量 ・・・もとにする量以外の数量(つまり、文章中の残り物です)
これに当てはめてみると
割合 ・・・打率
もとにする量・・・打数
比べる量 ・・・ヒット数
となり、「もとにする量×割合=比べる量」ですので、
「打数×打率=ヒット数」という式ができます。
例えば
昨年のロッテ荻野選手は508打数160安打でした。さて、この時の打率はどのぐらいでしょう?
\( 160÷508=0.3149・・・より\)
小数第4位を四捨五入すると0.315となり、
打率は3割1分5厘です。
大体、1試合に4〜5回打席が回ってきますので、1試合平均1本はヒットを打っている計算になります。
次に防御率を考えてみます。
防御率・・・ピッチャーが9回投げたとした時の失点数です。(本当は自責点です)
まず、1回あたりにどれぐらいの失点をしたか計算してみると
「1回あたりの失点数=失点数の合計÷投げた回数」です。平均の計算式と同じです。
これを9回あたりで考えたのが防御率ですので、
「失点数の合計÷投げた回数×9=防御率」となります。
例えば
昨年のオリックス山本投手は143回を投げて失点が31点でした。この時の防御率はどのぐらいでしょう?
\( 31÷143×9=1.9510・・・となり、\)
小数第3位あたりを四捨五入して、
防御率は1.95となります。
つまり、9回投げて2点取られないという凄いピッチャーですね。
このように、当たり前ですが、打率や防御率なども言葉の定義があり、その意味を正しく知っていれば式を作ることもできますし、計算もできます。
これは算数、数学でも同じで、みんな言葉を疎かにしがちですが、言葉の定義から公式を作ったり、考えを拡げさせていくことも可能です。
「算数、数学だから数字や公式が大事」と考えるのではなく、言葉に目を向けさせてみてはどうでしょうか。
3.プロ野球で、子どもに球速など「速さ」を教える
ひと昔(と言っても20年ぐらい前)はピッチャーの投げる球の速さは大体時速140km前半ぐらいが主流でした。しかし、最近はどの球団にも時速150km以上の球を投げるピッチャーがいます。またエンゼルスの大谷翔平選手のように、時速165kmを投げる日本人まで出てきました。驚くべき進化ですよね。
では、このピッチャーが投げる球が速いか、野球のグラウンドの距離などのデータを使って考えていきます。野球規則では、内野は次のように定められていて、ピッチャーが投げるマウンドからバッターまでは18.44m離れています。
さて、このデータに基づいて算数の問題を解いてみましょう。
例 エンゼルス大谷翔平選手の投げる球の球速は時速165kmです。
では、投げた瞬間からバッターの目の前に来るのに何秒かかるでしょうか。
これは速さの問題です。
「何秒かかるか」と問われているので、時速を秒速に直すところから始めます。(速さは問題で問われている物の単位に合わせる事が大事です)
時速165km→時速165000mとし、
\( 165000÷60÷60=45.833…\)
四捨五入して秒速45.8mとしましょう。
距離が18.44mですので、かかる時間は
\( 18.44÷45=0.40977…\)
四捨五入して0.41秒です。
つまりまばたきしている間にボールが目の前に来ている感じです。普通の人ならまずバットが出せませんから、プロのバッターは本当に凄いですよね。実際に数字を出してみると、「速い」という言葉に重みが増しますよね。
野球を観戦している時や野球ニュースを子どもと一緒に見ているときに、是非利用してみてください。
4.プロ野球や甲子園で、子どもに「場合の数」を教える
場合の数でよくあるのが「トーナメント戦」と「総当たり戦」の試合数の求め方です。まずはこの違いをしっかり理解しておきましょう。
「トーナメント戦」というのは下の図のような図がよく使われますが、最後に1チームの勝者を決める戦いです。野球では甲子園がこれにあたりますね。ではその他のチームはどうなってしまうのか、というと試合で負けてしまいます。負けるというのは試合をして負けますので、「負ける数だけ試合がある」という考え方ができます。つまり、トーナメント戦では全チーム数ー1チームだけ負けますので、その分試合が行われます。
「トーナメント戦の試合数=全チーム数ー1」
甲子園で考えてみると、夏の甲子園は49チーム(47都道府県+北海道、東京がもう1チームずつ)ですので、優勝が決まるまでに全部で49−1=48試合行われます。
次に総当たり戦を考えてみましょう。
総当たり戦とは、各チームが他のチームをそれぞれ1回ずつ試合をする事です。
例えば、パ・リーグで総当たり戦をすると次の組合せになります。
樹形図を利用して総当たり戦を書きだすとこのようになります。
総当たり戦を、多角形の対角線、辺を利用して表すこともできます。
どちらも数えれば15試合ある事はわかりますが、これを計算でも考えてみます。
まず、各チーム共に5試合ずつ行いますので、全部で
5×6=30試合あります。
ここで、ロッテー西武と西武ーロッテは同じ対戦カードですので、ダブってしまっています。
どの試合もこのようにダブってしまっているので、
30÷2=15
15試合となります。
一応、公式としてまとめておくと(あんまり公式は好きではないんですが・・・)
「総当たり戦の試合数=(チーム数ー1)×チーム数÷2」で求められます。
5.プロ野球を観戦する時にも子どもに教えるチャンスあり
本当はまだまだ話たりないですが、今回はここでお開きにしたいと思います。
今回は野球を通して、数字に触れることができるという内容でお送りしました。ただ野球を子どもと一緒に観るのももちろん面白いですが、数字を考えたり理解する事で、その面白さはさらに広がっていきます。
椅子と机で行うだけが勉強ではなく、スポーツも勉強ツールになるものだと考えてもらえたら幸いです。
今年は120試合と少なく、かつ同カード6連戦が続く日程と言われています。
野球ファンにとっても楽しみ方が変わる1年である事は間違いありません。
秋口にどのチームがペナントを制しているか、楽しみに観ていきましょう!
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小学生をメインに学習指導を行っております。どんな問題でも分かりやすく解説できることを売りにしています。算数指導は非常に難しいものです。家庭でもお子様に指導できるように精一杯伝えていくつもりです。