こんにちは、スタディーメンターの曽川です。
溶解度は中学受験理科で苦労しがちな単元の1つです。
お子様から、「温度が変わるとどうなるか分からない」や「算数の食塩水は解けるけど理科の溶解度は計算できない」など聞いたことはありませんか。
溶解度は、まずは理科として用語の意味や表し方・現象を正しく理解すること、そして算数の比例の計算を使いこなせるようにすることで、着実に苦手を解消できます。
今回、溶解度という理科の考え方に加え、算数の比例および比の使い方を整理し、お子様に溶解度を教えるのコツをお伝え致します。
目次
1.溶解度の基礎知識とは?!
結論から言うと、溶解度の基礎知識のポイントは、3点あります。
① 溶解度はものが溶ける最大量であることがチェックできている。
② 溶解度と温度の関係である「溶解度曲線」について食塩とホウ酸のグラフの特徴が分かる。
③ 溶解量を比例関係と割合・比を用いて正しく計算できる。
お子様に溶解度をレクチャーするときには、まずこれらについて、1つずつ確認していきましょう。
溶解度の定義
溶解度とは、「水100gに物質がその温度で溶けることができる最大量(g)」のことです。
すなわち、溶解度とは溶ける「ぎりぎり」の量を表しており、溶解度以下の量であれば物質は溶けきることができるのです。
逆に、溶解度より多い量であれば、溶解度の量までしか溶けることができず、溶解度を超えた量は溶け残ることになります。
例えば、ホウ酸の溶解度は60℃で水100gに15gであることが知られています。
従って、60℃では水100にホウ酸15gまでは溶けきることができ、仮に10g加えると全て溶け、20g加えると15gまでしか溶けず5gが溶け残ることになるのです。
物質は溶解度までは溶けきるが、溶解度を超えると溶解度までしか溶けない!
溶解度曲線
溶解度は温度によって変化し、温度と溶解度の関係を表したグラフを溶解度曲線といいます。
中学受験では、溶解度曲線の例として、まずは「食塩」と「ホウ酸」から理解すると分かりやすいです。
以下に、食塩とホウ酸の溶解度曲線を示します。
食塩とホウ酸のグラフの特徴は、食塩が温度が上がっても溶解度があまり変化しない一方で、ホウ酸は温度が上がると溶解度が大きく変化することです。
食塩とホウ酸のグラフは温度上昇による溶解度の変化に差があることをチェックしておきましょう。
また、多くの水に溶ける固体では、温度が上がると溶解度が大きくなるということも知っておきましょう。
温度が上がるにつれて溶解度は、食塩はあまり変化せず、ホウ酸は大きく変化!
溶解量の計算
①水の量と溶ける最大量の関係
溶ける最大量を計算するとき、いつも水が100gであるとは限りません。その為、水の量と溶ける最大量との関係を正しく理解しておく必要があります。
ホウ酸を例に水の量と溶ける最大量の関係をチェックしていきます。
ホウ酸は60℃で水100gに15gまで溶けます。
では、ホウ酸を60℃で水200gに溶かすと何gまで溶けるでしょうか。水200gは水100gが2つあると考えると、ホウ酸は水100gで15gまで溶けるので、15g ×2 = 30gまで溶けます。
同様に、ホウ酸を60℃で水300gに溶かすと、水300gは水100gが3つあると考えて、ホウ酸は 15g × 3 = 45gまで溶けます。
よって、水の量とホウ酸の溶ける最大量は、次の表のようになります。
これは、水の量を2倍、3倍にすると、ホウ酸の溶ける最大量も2倍、3倍になっているので、水の量と溶ける最大量は比例であることが分かります。
水の量と溶ける最大量が比例関係なので、水の量の比と溶ける最大量の比は正比になります。
比例関係を使うと、水の量が一見分かりにくい溶ける最大量を計算することができます。
例えば、水の量が240gであるときホウ酸が60℃で溶ける最大量□(g)を求めると次のようになるのです。
(水の量の比)=(溶ける最大量の比)
100g : 240g = 15g : □
□ = 36 g
②飽和溶液の量と溶けている量
水の量と溶ける最大量の関係と同様に、溶けるだけ溶かしたときの全体の量(「飽和溶液の量」とも言えます)と溶けている量の関係もチェックできます。
①でのホウ酸の例で、飽和溶液の量と溶けている量を確かめると、次の表のようになります。
表より、飽和溶液の量と溶けている量が比例であり、その比は正比になることが分かります。
そして、比例関係より、飽和溶液の量から溶けている量を計算することができます。
例えば、ホウ酸を60℃で溶けるだけ溶かした水溶液が805gあるとき、溶けているホウ酸の量□(g)は、次の比の計算より求められます。
(飽和溶液の量の比) = (溶けている量の比)
115g : 805g = 15g : □
□ = 105g
「水の量と溶ける最大量」、「飽和溶液の量と溶けている量」は、比例関係で正比!
2.溶解度の実践問題で基礎知識を定着させる
問題演習でのキーワードは「ぎりぎりを探す」!
溶解度の問題を解くときの最大のポイントは、「飽和溶液に注目する」です。
溶解度は水100gに物質がその温度で「ぎりぎり」溶ける量なので、飽和溶液のデータになります。
よって、溶解度を使って計算するためには、条件から飽和溶液を見つける必要があります。
しかし、お子様との学習では「飽和溶液」という用語は分かりにくい場合があります。
そのときには、「ぎりぎりを探す」をキーワードにすると理解度・定着度が高まりやすいです。
溶解度の問題では、「ぎりぎりを探す」で飽和溶液を見つける!
実践問題で比例の計算を定着させる!
ここまで要点がつかめれば、あとは実践問題で「ぎりぎりを探す」、比例の計算を練習するのみです。
例題2問をご紹介しますので、お子様との学習に利用してみて下さい。
【問題1】
20℃の水360gにホウ酸を溶けるだけ溶かしたところ、ホウ酸は(ア)g溶けた。この溶液を60℃まで温めると、ホウ酸をさらに最大(イ)g溶かせるようになった。
空らん(ア),(イ)に適する数値を答えよ。ただし、ホウ酸の溶解度(それぞれの温度で水100gに溶ける量)は、20℃で5g、60℃で15gとする。また、加熱による水の蒸発は考えないものとする。
【解答・解説】
答え:(ア)18, (イ)36
まず「ぎりぎりを探す」ことからはじめます。
そうすると、「20℃の水360gにホウ酸を溶けるだけ溶かした」、「60℃まで温めると(中略)さらに最大(イ)g溶かせる」という2つの「ぎりぎり」が見つかります。
よって、(ア)は20℃の水360gと分かっているので、水の量と溶ける最大量が比例であることより、次のように求められます。
(水の量の比)=(溶ける最大量の比)
100g : 360g = 5g : ア
ア = 18g
また、(イ)のとき、すなわち60℃でも水は360gで変わらないので、60℃での溶ける最大量□(g)は同様に求められます。
(水の量の比)=(溶ける最大量の比)
100g : 360g = 15g : □
□ = 54g
ここで、(イ)は(ア)からの変化量であることに注意すると、次のように求められます。
イ = 54 - ア
= 36g
【問題2】
100℃の水にホウ酸を溶けるだけ溶かした飽和溶液345gを作った。この溶液を20℃まで冷却すると、結晶が(A)g得られた。
空らん(A)に適する数値を答えよ。ただし、ホウ酸の溶解度(それぞれの温度で水100gに溶ける量)は、20℃で5g、100℃で38gとする。また、冷却時の水の蒸発は考えないものとする。
【解答・解説】
答え:(A)82.5g
やはりまずは「ぎりぎりを探す」です。
今回は、「100℃(中略)飽和溶液345g」については分かりやすいですが、もう1つ「この溶液を20℃まで冷却すると結晶が(A)g得られた」も「ぎりぎり」になります。
これは、もともと100℃で「ぎりぎり」なのだから、温度を下げても溶解度は大きくならずむしろ小さくなるので、20℃でも「ぎりぎり」と判断できるからです。
100℃の飽和溶液345gより、水の量□(g)、溶けている量△(g)を求められます。
飽和溶液の量と溶けている量が比例であることより、
(飽和溶液の量の比)=(溶けている量の比)
138g : 345g = 38g : △
△ = 95g
水の量は飽和溶液の量と溶けている量より、
□ = 345 – 95
= 250g
ここで、20℃で結晶が得られたとき、100℃のときから水の量が変化していないことより、溶けている量☆(g)を求められます。
水の量と溶ける最大量が比例であることより、
(水の量の比)= (溶ける最大量の比)
100g : 250g = 5g : ☆
☆ = 12.5g
結晶の量(A)は100℃で溶けている量と20℃で溶けている量より、
A = 95 – 12.5
= 82.5g
3.まとめ
溶解度は、理科の用語・現象を理解することに加え、算数の比例関係と割合・比を利用できることも重要です。まずは正しく理解し計算できるように質を意識してポイントをチェックしましょう。そして、その後の定着には量をこなすことも大切です。普段使っている教材で繰り返しの演習を行うと良いと思います。
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研究者だった経験を活かし、小学生に理科および算数、中高校生には物理化学数学を指導しています。専門的な内容も小学生にでも分かるように噛み砕くことを意識し、医学部指導も行っております。分かりやすく情報を伝えていきます。