塾で教えていると、算数嫌いの子を多く受け持ちます。彼らが生まれながらにして算数嫌いかというと、それはありえません。今までの生活の中のどこかの段階で数字に対して苦手意識を持ち、それが続くことで算数嫌いを生んでしまいます。
では、算数嫌いを克服するためにはどのようなことを実践していけば、日常生活の中で、算数を好きにさせることのできる方法を示していきます。
目次
1.算数嫌いの原因とは
計算がやりたくないから算数が嫌い
6年生になってくると学校でも「四則演算」が出てきますし、進学塾では4年生から複雑な計算に触れる機会が増えてきます。ここで計算ミスを繰り返してしまうことが、計算嫌いの入口になってしまいがちです。
ただ、この「四則演算」の練習を繰り返せば計算力が付くか、というとそうでもありません。
その手前の段階の基本的な\( +-×÷ \)の計算力がまだ出来上がっていないために、計算ミスを引き起こしてしまうのです。
計算は日々の積み重ねが大切ですので、簡単な計算ドリルや身の回りにあるものを使って計算に触れ、慣れさせていくことが大切です。
わかった気になってしまう
塾や学校の先生の解説を聞いてしまうと、「たったそれだけだったのか!」「あっ、これなら解ける!」という理解した‘気‘になりがちです。理解できた(と思っている)ものに対しての復習は必然的に甘くなりますので、そこから傷口が広がっていきます。
復習する際に求められるのは
の2点です。
解き方の丸暗記にならないようにすることが大切です。
2.身近にあるもので算数を学べる
机に向かって計算ドリルを解くだけが計算練習なのではなく、日常生活の中で数字に触れる機会を増やすこともまた計算練習になります。具体的な状況で、教え方は変わりますので、例を挙げていきます。
買い物で算数好きになる
子供を買い物に連れて行ったときに、遊び感覚で練習させてみるといいでしょう。ドリルと違い、勉強している感じが全くない中で練習が可能です。
次のような、質問をしてみるといいでしょう。
いきなり、難しい質問をするのではなく、段階的にレベルを上げていくとより良いです。
「お惣菜が300円で、サラダが150円で買えたよ。全部でいくらになるかな?」
「遠足用のおやつ300円分を自分で探してきて!」
「あそこに1個40円のジャガイモがあるからそれを3個買ったらいくらになる?」
「今、お買い物をすると買った金額の20%が返ってくるんだって。じゃあ2000円分買ったらどのぐらい戻ってくるかな?」
「200g500円の牛肉と300g600円の牛肉、どっちを買ったらいいと思う?」
と、いうように様々な計算練習が可能です。さらに、「いくら?」を「いくらぐらい?」という質問に変えることで、概算(だいたいこのくらい)の練習も可能です。
時間の計算でも算数好きになれる
時間の計算が初めて学校教育で出てくるのは小学2年生ですので、基本的には小学2年生より上を対象としていますが、計算博士の1年生もどうぞ!
(1)「今、午後4時だって。今から1時間ゲームをしてもいいけど、何時までやっていいのかな?」
(2)「今、午後4時40分だって。今日は30分しかゲームをしちゃダメだよ。何時何分までやっていいのかな?」
(3)「今、5時58分だね。次の電車は6時3分みたいだけど、何分後に来るかな?」
(4)「このお弁当レンジで2分でできるって。じゃあこれ5個だったら何分かかる?」
(5)「今日は宿題が3つ出ているけど、1時間半ぐらいで終わらせないとね。1つ何分ぐらいかけていいかな?」
<時間計算2大テーマ>
〇たす、引く、かける、割るの使い分け
〇時間の繰り上がり、繰り下がりの計算をスムーズに!
日数と曜日の計算でも算数が好きになる
ここでは日にちと曜日の計算について扱っていきます。家族のイベント事まであと何日ある?という問いが一番聞きやすいでしょう。
(1)「今日は6月18日火曜日。日曜日野球観に行くけど、それって何日?」
(2)「もう6月18日かぁ。6月はあと何日あるかな?」
(3)「今日は6月18日火曜日。次の日本代表戦は24日だって。それは何曜日?」
(4)【上級編】「今年の誕生日は月曜日だったけど、来年は何曜日だろうね?じゃあ再来年はどうだろう?」
<日数計算2大テーマ>
〇たす、引くの計算を強くする!
〇各月の日数を理解する!
曜日計算ではここに「曜日は月〜日の7日で周期になっている事を活用する」という規則性の考え方が入ってきます。
野球で算数好きになる
野球では様々な数字が使われています。それを本塁打数、打率、勝利数、防御率など様々な指標で選手を評価していきます。それを大きく分けると、「数を積み上げていく成績」と「割合で表される成績」の2種類に分けられます。
割合で表される成績として、野球を知っている人なら真っ先に思いつくのは「打率」「防御率」などの言葉でしょう。打率が高いとバッターとして一流になっていき、防御率が低いとピッチャーとして一流になっていきます。では、野球を知らない人からしてみると、「打率は高いから良くて、防御率は低いから良いって、なんかおかしくない?」という感覚を持ってしまうでしょう。
成績以外で思いつくことと言えば、ピッチャーの球速などでしょう。つまり速さの感覚です。最近のピッチャーは時速150kmぐらいの速さで投げてきますが、それがどのぐらいの距離から投げてきて、何秒でバッターの前に到達するのか、気になった事はありませんか?
子どもが気になっている場合もあります。または、こちらから問いかけてみるのもいいでしょう。
具体的に、野球を例に算数の教え方をまとめます。
打率・・・打数に対するヒットを打った数の割合の事
ここで、割合を思い出してください。
割合の3つの要素を振り返ってみると、「もとにする量」「比べる量」「割合」の3つでしたね。
それぞれの簡単な見分け方を書くと
割合
◯割◯分◯厘、◯%、◯倍など もとにする量
割合の前に書いてある「〜の」「〜に対する」「〜をもとにした時の」 比べる量
もとにする量以外の数量(つまり、文章中の残り物です)
これに当てはめてみると
割合 ・・・打率
もとにする量・・・打数
比べる量 ・・・ヒット数
となり、「もとにする量×割合=比べる量」ですので、
「打数×打率=ヒット数」という式ができます。
例えば
昨年のロッテ荻野選手は508打数160安打でした。さて、この時の打率はどのぐらいでしょう?
\( 160÷508=0.3149・・・より \)
小数第4位を四捨五入すると0.315となり、
打率は3割1分5厘です。
大体、1試合に4〜5回打席が回ってきますので、1試合平均1本はヒットを打っている計算になります。
次に防御率を考えてみます。
防御率
ピッチャーが9回投げたとした時の失点数です。(本当は自責点です)
まず、1回あたりにどれぐらいの失点をしたか計算してみると
「1回あたりの失点数=失点数の合計÷投げた回数」です。平均の計算式と同じです。
これを9回あたりで考えたのが防御率ですので、
「失点数の合計÷投げた回数×9=防御率」となります。
例えば
昨年のオリックス山本投手は143回を投げて失点が31点でした。この時の防御率はどのぐらいでしょう?
\(31÷143×9=1.9510・・・となり、\)
小数第3位あたりを四捨五入して、
防御率は1.95となります。
つまり、9回投げて2点取られないという凄いピッチャーですね。
このように、当たり前ですが、打率や防御率なども言葉の定義があり、その意味を正しく知っていれば式を作ることもできますし、計算もできます。
これは算数、数学でも同じで、みんな言葉を疎かにしがちですが、言葉の定義から公式を作ったり、考えを拡げさせていくことも可能です。
「算数、数学だから数字や公式が大事」と考えるのではなく、言葉に目を向けさせてみてはどうでしょうか。
ひと昔(と言っても20年ぐらい前)はピッチャーの投げる球の速さは大体時速140km前半ぐらいが主流でした。しかし、最近はどの球団にも時速150km以上の球を投げるピッチャーがいます。またエンゼルスの大谷翔平選手のように、時速165kmを投げる日本人まで出てきました。驚くべき進化ですよね。
では、このピッチャーが投げる球が速いか、野球のグラウンドの距離などのデータを使って考えていきます。野球規則では、内野は次のように定められていて、ピッチャーが投げるマウンドからバッターまでは18.44m離れています。
さて、このデータに基づいて算数の問題を解いてみましょう。
例 エンゼルス大谷翔平選手の投げる球の球速は時速165kmです。
では、投げた瞬間からバッターの目の前に来るのに何秒かかるでしょうか。
これは速さの問題です。
「何秒かかるか」と問われているので、時速を秒速に直すところから始めます。(速さは問題で問われている物の単位に合わせる事が大事です)
時速165km→時速165000mとし、
\( 165000÷60÷60=45.833…\)
四捨五入して秒速45.8mとしましょう。
距離が18.44mですので、かかる時間は
\( 18.44÷45=0.40977…\)
四捨五入して0.41秒です。
つまりまばたきしている間にボールが目の前に来ている感じです。普通の人ならまずバットが出せませんから、プロのバッターは本当に凄いですよね。実際に数字を出してみると、「速い」という言葉に重みが増しますよね。
場合の数でよくあるのが「トーナメント戦」と「総当たり戦」の試合数の求め方です。まずはこの違いをしっかり理解しておきましょう。
「トーナメント戦」というのは下の図のような図がよく使われますが、最後に1チームの勝者を決める戦いです。野球では甲子園がこれにあたりますね。ではその他のチームはどうなってしまうのか、というと試合で負けてしまいます。負けるというのは試合をして負けますので、「負ける数だけ試合がある」という考え方ができます。つまり、トーナメント戦では全チーム数ー1チームだけ負けますので、その分試合が行われます。
「トーナメント戦の試合数=全チーム数ー1」
甲子園で考えてみると、夏の甲子園は49チーム(47都道府県+北海道、東京がもう1チームずつ)ですので、優勝が決まるまでに全部で49−1=48試合行われます。
次に総当たり戦を考えてみましょう。
総当たり戦とは、各チームが他のチームをそれぞれ1回ずつ試合をする事です。
例えば、パ・リーグで総当たり戦をすると次の組合せになります。
樹形図を利用して総当たり戦を書きだすとこのようになります。
総当たり戦を、多角形の対角線、辺を利用して表すこともできます。
どちらも数えれば15試合ある事はわかりますが、これを計算でも考えてみます。
まず、各チーム共に5試合ずつ行いますので、全部で
5×6=30試合あります。
ここで、ロッテー西武と西武ーロッテは同じ対戦カードですので、ダブってしまっています。
どの試合もこのようにダブってしまっているので、
30÷2=15
15試合となります。
一応、公式としてまとめておくと(あんまり公式は好きではないんですが・・・)
「総当たり戦の試合数=(チーム数ー1)×チーム数÷2」で求められます。
サッカーで算数好きになる
サッカーで算数というと、筆者は割合のイメージが強く、ボール保持率、枠内シュート率などのデータが思い浮かびました。よくテレビ中継で画面下にデータが出てきますよね。これについては、前回の番外編の野球でも話したように、「言葉の定義」から式が作れますので、今回はここは割愛します。
その他、算数の要素があるものとして、サッカーボールの頂点、辺、面の数に関する話があります。今回はこちらを考えてみます。
標準的なサッカーボールは下のような形をしています。黒い部分は正五角形、白い部分は正六角形です。
五角形の部分は12面、六角形の部分は20面ある形をしています。これはアルキメデスの立体と呼ばれる立体の一種、切頂二十面体という立体の内側に空気を入れて膨らませて球形に限りなく近づけた立体です。今回はこの面、辺、頂点の数について求めてみましょう。
まず、面の数については問題ありませんね。五角形が12面、六角形が20面あるので、全部で32面です。
次に、辺の数を考えてみましょう。
立体の辺を考える時には、まず、全てバラバラの状態にして、辺の合計を考えてみます。
5×12+6×20=180(本)の辺があります。
立体には次のような性質があります。
「立体の辺は2つの面の辺を共有して作られる」(下図を参考にしてください)
よって、バラバラの180本の辺を2つずつ組み合わせていくと
180÷2=90(本)となり、この立体の辺の本数が求められます。
最後に、頂点について求めてみましょう。
頂点も発想は辺の時と同じで、バラバラの状態にしてからくっつけていきます。
バラバラにすると、頂点の数は辺と同じ180(個)になります。
ここからが少し辺と違って、立体図形の頂点は1つの頂点に集まっている面の個数が大切になってきます。これは立体によって違うので、注意が必要です。中学に入るとオイラーの多面体定理というものを習いますので、面と辺がわかれば、頂点はここまで考えなくても求まります。
ある頂点に注目すると、1つの頂点に、六角形2つ、五角形1つが集まっています。つまり、3つの面の頂点で立体の頂点が出来上がっているわけです。
ですので、バラバラの180個の頂点を3つずつ組み合わせていくと、
180÷3=60(個)となり、この立体の頂点は60個になります。
ラグビーで算数好きになる
昨年(2019年)日本でラグビーワールドカップが開催され、日本は過去最高のベスト8を獲得して歓喜に湧きました。実はその裏で算数の入試の世界でも少しだけラグビーが盛り上がりを見せていました。それはラグビーの得点方法のルールが随分と算数向きであったのです。
知らない人のために軽く得点ルールを示しておきます。
得点の種類は簡単に4つに分けられます。
①トライ・・・相手側のインゴールと呼ばれるスペースにボールを持ち込んで、地面につけると5点が与えられる
②コンバージョンゴール・・・トライが成立したあとに行うゴールキックで、ボールがゴールポストの間、かつクロスバーの上を超えると2点与えられる。五郎丸のポーズで有名。
③ペナルティーゴール・・・相手の反則で与えられるペナルティキックで、反則が起きた地点からキックし、ボールがゴールポストの間、かつクロスバーの上を超えると3点が与えられる。
④ドロップゴール・・・インプレー中に地面にワンバウンドさせたボールをキックし、ボールがゴールポストの間、かつクロスバーの上を超えると3点が与えられる。
この得点の仕組みが算数の問題向きだったわけです。
ここで問題例を挙げていきます。今回は千葉明徳中学校の適性検査サンプル問題を紹介したいと思います。(一部改題および、追加をしています)
今回は上の得点方法のトライ、コンバージョンゴール、ペナルティゴールの3つの得点方法で考えます。
(1)AチームとBチームの対戦で、Aチームがトライを5回、コンバージョンゴールを3回、ペナルティゴールを4回決めました。この時のAチームの得点は合計何点でしたか。
答え 5×5+2×3+3×4=43 43点
続いて、CチームとDチームの対戦で、33対25でCチームが勝利しました。
(2)Cチームがトライを4回決めた時、コンバージョンゴールを 4 回とも成功させることはあり得ません。その理由を答えなさい。
答え 仮に4回成功させると5×4+2×4=28点になります。Cチームは33点取りましたので、残りは33ー28=5点です。ペナルティゴールは3点ですので、3の倍数で5を作る事はできません。よって、コンバージョンゴールは4回成功させる事はあり得ません。
(3)Cチームは,トライを 4 回決めました。このとき,Cチームのコンバージョンゴールによる得点は何点ですか。
答え トライを4回決めると、5×4=20点、残りは33ー20=13点です。これを2点と3点で作ることを考えると、その組合せは(2点、3点)=(5、1)、(2、3)の2パターンですが、コンバージョンゴールは必ずトライの後ですので、トライの数よりも少ないことが注意点です。よって(5、1)の組合せは条件に反し、正解は(2、3)の組合せです。
(4)Dチームの得点の取り方を全て求めなさい。
答え Dチームは25点ですので、トライの回数は最大25÷5=5(回)となります。ここからトライの数によって場合わけをして、調べていきます。
1.トライが5回の場合はその他のゴールについては0回です。
2.トライが4回の場合を考えると残りが5点ですので、(2点、3点)=(1、1)となります。
3.トライが3回の場合は残りが10点になりますので、(2点、3点)=(5、0)、(2、2)となりますが、トライの数に注意して、(2、2)のみとなります。
4.トライが2回の場合は残りが15点になり、(2点、3点)=(6、1)、(3、3)、(0、5)となりますが、トライの数に注意して(0、5)のみとなります。
5.トライが1回の場合は残りが20点になり、(2点、3点)=(10、0)、(7、2)、(4、4)、(1、6)となり、トライの数に注意して(1、6)のみとなります。
6.トライが0回の場合は残りが25点になり、3点のみでは25点は作れないため、ありません。
まとめると(5点、2点、3点)=(5、0、0)、(4、1、1)、(3、2、2)、(2、0、5)、(1、1、6)の5通りです。
習ったことを子供に説明をさせてみることで算数が好きになる
塾や学校の先生から習ってきたことをそれぞれの問題で聞いてみてあげてください。その際に親が注意しなければならない点は次の通りです。
① 過程がおかしくても、子供の説明を最後まで聞く。
② 間違っていても決して怒らない。
③ 正しく説明できていたらほめる。
という3点です。また、大人と違って、正しく筋道立てて説明することは子供には中々できないことですので、そこは大人がフォローしてあげてください。
説明することが、難しいと感じた場合には、
① ノートや解答を見ながら一緒に考える
② 塾や学校の先生に質問に行かせる
などの策を講じることが良いです。
子供の話を良く聞く!!
親も一緒に楽しむことで算数が好きになる
私の授業ではたまに「親と一緒に考える問題」というものを出します。問題自体も生徒たちには少し難しいものが主ですが、子供が挑戦している問題を一緒に考えてみることで、親、子供両方にメリットはあります。
子供→ 親でも大変なことを自分は頑張っているという自信
親 → 子供が実はここでつまづいていたんだという発見
また、親が算数嫌いだったとしても、そこはグっとこらえて子どもと一緒にチャレンジすることで、子どもが算数を好きになります。
家族で考えること!!
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小学生をメインに学習指導を行っております。どんな問題でも分かりやすく解説できることを売りにしています。算数指導は非常に難しいものです。家庭でもお子様に指導できるように精一杯伝えていくつもりです。